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東京地方裁判所 昭和48年(ワ)5764号 判決 1974年7月26日

原告 上田元興

被告 柴田フサ

<ほか三名>

右四名訴訟代理人弁護士 原長一

被告 蒲生久子

被告 沼田栄子

右両名訴訟代理人弁護士 相良有明

同 相良有一郎

主文

本件訴を却下する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の申立

一  原告

1  別紙目録記載(一)、(二)の各土地が原告の所有であることを確認する。

2  訴訟費用は被告らの負担とする。

二  被告ら

1  被告柴田、同比嘉、同舟見、同上田(以下「被告柴田外三名」という。)

(本案前の申立)

主文第一項同旨

(本案に対する申立)

(一) 原告の請求を棄却する。

(二) 訴訟費用は原告の負担とする。

2  被告蒲生、同沼田(以下「被告蒲生外一名」という。)

(一) 原告の請求を棄却する。

(二) 訴訟費用は原告の負担とする。

第二当事者の主張

一  請求の原因

別紙目録記載(一)、(二)の各土地(以下「本件各土地」という。)はもと亡父上田権一郎の所有であったところ、原告は、昭和一七年夏頃同人から贈与を受けてその所有権を取得し、同年一一月七日その旨の所有権移転登記を経由したものである。

しかるに、被告らは、原告の本件土地に対する所有権を争うのでこれが確認を求める。

二  被告柴田外三名の答弁

(本案前の抗弁)

1 原告を含む本件訴訟の当事者はすべて訴外亡上田権一郎の相続人であるところ、本件各土地はいずれももと上田権一郎の所有で同人の遺産に属するものであるが、権一郎は遺言によって訴外中原盛次を遺言執行者に指定し、同人が遺言執行者に就職して、本件各土地については現に東京家庭裁判所において遺産分割審判事件が係属中である。したがって、被告らは右遺産に属する本件土地につき、その管理処分権を有しないこととなる結果、本訴における被告適格を有しないものと解すべきであるから、本件訴は不適法として却下されるべきである。

(本案に対する答弁)

1 本件各土地がもと亡上田権一郎の所有であったことは認めるが、その余の事実は否認する。

本件各土地は権一郎の死亡により本件訴訟当事者全員が共同相続をし、その共有に属することとなったものである。

2 本件各土地については、さきに本件原告から本件被告上田芳および亡上田権一郎(同人の死亡により本件被告ら外一名が上告審で訴訟承継)に対し、本件原告が権一郎からこれを贈与により所有権を取得したことを前提とし、本件原告から順次被告上田芳、同人から権一郎に対してなされた所有権移転登記が実体上の権利関係を欠くものとして、その抹消登記手続請求の訴を提起したところ、東京地方裁判所は、昭和三二年五月七日権一郎の本件原告に対する贈与の事実を否定して、請求を棄却し(当庁昭和二九年(ワ)第八九三六号)、その控訴棄却の判決に対する上告審である最高裁判所も昭和三八年七月二三日上告棄却の判決を言渡し(最高裁判所昭和三五年(オ)第一〇二号)、第一審判決が確定したのである。したがって、本訴における原告の所有権の主張は理由がない。

三  被告蒲生外一名の答弁

原告が亡上田権一郎からその生前本件各土地の贈与を受けた事実は否認する。

四  被告柴田外三名の本案前の抗弁および確定判決存在の主張に対する原告の答弁

1  原告および被告らが亡上田権一郎の相続人であること、訴外中原盛次が亡権一郎のした遺言により遺言執行者に指定され、これに就職していること、本件各土地が権一郎の遺産に属するものとして東京家庭裁判所に遺産分割審判事件が係属していることは認める。なお、本件各土地は、昭和二九年八月二一日以降、登記簿上の所有名義人は上田権一郎となっている。

2  被告ら主張の前訴判決がその主張のとおりに確定したことは認める。しかしながら、前訴は所有権の存否を訴訟物とするものではないから、その既判力ないし既判力類似の効力が本訴に及ぶことはない。

第三証拠関係≪省略≫

理由

本件各土地がもと訴外亡上田権一郎の所有であったことは当事者間に争いがない。≪証拠省略≫によれば、本件各土地は、いずれももと上田権一郎の所有名義に登記されていたところ、昭和一七年一一月七日付売買を原因として原告名義に所有権移転登記が経由されたが、その後、同二九年一月七日、同月四日付売買を原因として被告上田芳名義に、ついで同年八月二一日、同月二〇日付売買を原因として再び上田権一郎名義に順次所有権移転登記がなされ、現に同人の所有名義のままとなっていることが認められ、これに反する証拠はない(最終的に亡権一郎名義となったことは原告の自認するところである)。そして、その後権一郎が死亡し(成立に争いのない乙第一ないし第三号証の訴訟当事者名、判決言渡年月日等を総合すれば、その死亡日時は、昭和三二年から同三八年七月頃までの間であると推認される。)、その相続が開始したが、原告および被告らがその相続人であること、亡権一郎は死亡にあたり遺言をなし、その遺言において訴外中原盛次を遺言執行者に指定した結果、同訴外人はこれを受けて現に遺言執行者に就職していること、本件各土地は権一郎の遺産に属するものとして、現在東京家庭裁判所にその遺産分割審判事件が係属していることは、いずれも当事者間に争いがない。

以上の事実関係によれば、本件各土地は、権一郎の相続財産に属するものとして、遺言執行者である中原盛次においてこれを管理しているものであることが明らかである。

しかるところ、本訴においては、原告は、前示のとおり昭和一七年に権一郎から所有権移転登記を受けた際、同人から贈与を受けたものと主張し、権一郎の相続人である被告らを相手方としてその所有権の確認を求めるのであるが、相続財産について遺言執行者が指定されまたは選任されて就職した場合には、遺言執行者が相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有するのであって、相続人は相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができなくなることは、民法(一〇一二条、一〇一四条)の明定するところである。したがって、相続人である被告らは本訴のように本件各土地が相続財産に属しないことの確認を求めることに帰する訴訟においてその被告となることも許されないものといわなければならない。けだし、被告らが本件のような訴訟において敗訴する事態を招来することは、とりもなおさず、遺言執行者に移された処分権限に抵触しこれを侵すことになるからである。そして、かかる場合には、原告は、本件土地について管理処分権を有する遺言執行者を被告としてその所有権の存否を確定しその判決の効力を相続人に及ぼさしめることによって、紛争を解決すべきものと解するのが相当である。

以上のとおり、本件訴は、被告となるべき適格を有しない者を相手方とした不適法な訴であるから、これを却下することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 吉井直昭)

<以下省略>

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